十回展に際し



 日新現代書研究会は創立十周年を迎えることになった。本会は漢字仮名

交じり書の書作研究会である。

 書道界は永いこと漢字書道と仮名書道との枠組みの中で展開されてきた。

昨今の書展を見てもこの傾向は未だ強い。しかし現代書道史の流れには、

現代の日常使う言葉や、現代の詩文など、多種多様な書作が試みられるよう

になった。これは時代の要求である。

 我々は書作するとき、「何を書くか」「何を書かねばならぬか」「どう書くか」

「どのように書くか」等、いろいろ考えるのが常である。現代に生きるものとして

生きた証を書に託す意味からも必然的なことである。

 書は詞(ことば)を書き、その意味を伝えると同時に、視覚感性に訴える

線の動きや、その響きがいかに、調和し、固有の表現が出ているかが問われる

芸術である。つまり筆者の人間性と文字造型のハーモニーが書の生命となって

いるのである。

 書は書き手と読み手の関係からも多くの市民との対話のできるものでなけ

ればならぬ。対話がなければ親しみもわかぬ。読める書、親しめる書を創る

ことは書が時代とともにあることであり、現代の書の課題である。

 漢字仮名交じり書は、漢字書と仮名書の融合という新しい枠組みの書の

展開である。書史的には現代書道の新しい歴史作りを背負った流れである。

この流れの中に身をおいて自己主張することが我々の責務である。我々以外、

皆師であるという立場に立ち、自己研修を積み重ね今日まで実践をしてきた。

 本会は十年の歩みの集大成として十回展を開催することになった。試行

錯誤しながらも、現代の書の本流を目指して、各自が書道観を築こうと努力

している。ご批評を賜らんこと乞い願う次第である。

 2012年3月16日






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